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人生フルーツ


20年ほど前、僕が積水ハウスに入社して3年目の頃に設計させていただいた宇都宮のAさんは、打ち合わせの時に僕と同期の営業をいつもご自宅に招いてくださり、夕飯をご馳走してくださり、家が完成してからもずっと可愛がっていただき、僕にとっては宇都宮の母親の様な存在です。結婚してからも家族ぐるみでお付き合いいただき、訪れるたびに今も娘のためにいつもパンを焼いていてくれる、魔女の宅急便の世界の住人の様な方なのですが、NHKのあさいちにも出演されたスーパー主婦でもあります。そんなAさんから、庭で洗濯物を干す時に部屋から庭まで段差があるので、ウッドデッキを作って解消てもらえませんか、とご要望いただき、早速大田原で一緒にお仕事させていただいた大工さんに協力してもらって計画。


相変わらず図々しくもお昼をご馳走いただき、お話ししていると、「人生フルーツ」という映画が宇都宮で上映される機会があるからいっしょに行きませんか?とお誘いいただきました。断片的に建築家の話であること、とても良い映画であること、人伝いに聞いていたので「ぜひ」とありがたくチケットをいただいて先日観てきました。


とても感動しました、と文字で書いて軽くなってしまうことが恥ずかしくなるほど深く滲みる映画でした。いつも20年後にも幸せに暮らせる住宅を、と思って家づくりに取り組んでいるつもりですが、濃霧の様に霞んで見えてない理想的な人生の最期と幸せのかたちを少し垣間見ることができ、深く色々なことを考えたり、昔憧れていた生き方を改めて思い出すきっかけになりました。


長く生きるほど人生は美しくなる。


映画を見終えて相変わらず図々しく20年前に設計したAさん家でお昼を頂きながら、「今回のウッドデッキ、樹脂でなく木で提案しててよかったですね、あぶないあぶない」と皆で大笑いしました。

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