regulus
さんかくカフェ
地域に福祉を届けるための建築
2024年
埼玉県さいたま市
店舗兼事務所
設計・工事監理
ポーラスターデザイン 一級建築士事務所・長澤徹
施工
株式会社榊住建・菊池将司
照明
大光電機株式会社・高木英敏・渡邉幸恵
植栽
装景NOLA・長谷川隆明
撮影
山本康平
2025年度グッドデザイン賞
地域に福祉を届ける、という取り組みに寄り添うための建築設計を目指しました。
高齢者‧障がい者支援事業者が運営する、地域に開いた誰もが利用しやすいカフェレストランの設計です。
依頼をいただき話を伺った際に、なんとなく「これは人の拠り所だな」と感じました。
お互いが支え合いながら、自然と人が集まるかたちを考えた時に、教会的なものが頭に浮かびました。
教会の語源であるギリシア語ekklēsiaは、本来市民の集まりという意味で用いられていたようです。
そういったぼやっとしたエスキスのような状態を、メンバーと共有しながらつくったプランになります。
さんかくの外観のフレームとなっている面は、外壁か屋根かわからない曖昧な形状で、この建物自体が明確でないことを提示し、働く人や利用する人の境界が自然に曖昧であって欲しいという願いを込めてデザインしました。
この計画の事業者である「福祉ネットワークさくら」は、創業以来27年にわたり、高齢者や障がい者・児を対象とした福祉サービスを地域に根ざして展開してきました。
その中で、福祉事業所が地域社会から閉ざされた存在になりがちであるという課題に直面し、「誰もが気軽に立ち寄れ、自然な交流が生まれる場をつくりたい」という想いから本計画が始まりました。
障がい者雇用に関わる中で見えてきた地域の課題や、高齢者と障がい者が共に過ごす心地よさの体験が、事業の原点です。
「誰もが活躍でき、誰もが利用しやすい場所をつくりたい」という理念のもと、地域と福祉をゆるやかにつなぐ「さんかくカフェ」が構想されました。
計画地となる北浦和は都心近郊の住宅地でありながら、地域交流の拠点となるような開かれた庭や駐車場を備えた施設が少なく、人と人とのつながりが生まれにくいという背景がありました。
この場が、誰もが安心して過ごせる拠り所となることを目指しています。
「さんかくカフェ」は、本格的なピザやパスタの提供にとどまらず、
マルシェやピザ教室、ミニコンサートなど、地域と多層的につながるイベントを定期的に開催。
働く障がい者や高齢者にとっては、地域と関わりながらいきいきと活躍できる職場であり、訪れる人にとっては気軽に福祉相談もできる窓口となっています。
カフェの庭では、子どもたちが宿題をしたり、遊んだりと自由に過ごし、地域の大人が「恩おくり券」でソフトクリームをプレゼントする風景が日常になりつつあります。
子どもが受け取った“ご恩”を、将来また誰かに返していく――そんな循環をこの場が育んでいます。
建物はバリアフリー設計で、スロープや広いトイレ、テラス席を整備。車いすやベビーカー、ペット連れの方まで誰もが安心して利用できる環境です。
雑木の庭の手入れには福祉事業所の利用者も関わり、地域と福祉が自然に混ざり合う風景をつくり出しています。
素材にもこだわり、ナポリ産モッツァレラや北海道産小麦を使った本格ナポリピッツァ、長野県産すずらん牛乳100%のソフトクリームを提供。
障がい者事業所が製造したソーセージやハチミツも取り入れ、地域との協働を味覚でも感じられる内容です。
さらに、カフェでは障がい者事業所の菓子を販売し、工賃の向上にも貢献。パンフレットや福祉情報の掲示、セミナー・相談会を通して、地域生活支援拠点としての役割も果たしています。
今後は、地域の保育園・小学校と連携したこども食堂や福祉教育の取り組みも予定されており、「さんかくカフェ」は、誰もが安心して過ごせる居場所であると同時に、福祉と地域を結ぶ新たな社会モデルとして、地域にしっかりと根を下ろしています。
























